ごく最近のことですが、

平安時代の、まだ武田信玄公が生まれる450年も前、甲斐源氏の初代当主、新羅三郎義光(源義光)公が創建し、自らの甲冑を奉献したところから「鎧堂」と名付けられたお堂がこの北杜市、高根町にあることを教えて頂きました。

小淵沢には、同じように新羅三郎義光公が建立されたという「矢の堂」があり、どちらも戦国時代には武田信玄公の重要な戦勝祈願所。その関係性に興味も湧きます。

この鎧堂観音では、立春を過ぎて最初の午の日に初午大祭なる行事があり、何十年か前まではそこに何百頭もの馬が集まっていたと聞きます。地域の観音さんとして親しまれていただけで無く、馬(やがては牛も含む)を守護する観音様として古来より厚い信仰を集めていたことから、方々より関係者も集まり、大変な賑わいを見せていたようです。ただ最近は地域の人々と、僅かの関係者が集まるだけになってしまっていたようなのですが、その初午大祭が今年は3月3日に行われるということで、行ってきました。

訪れるとまず大きな山門に圧倒。左右には大きな仁王像、そしていつの時代のものなのか、とても古い絵馬が掲げられています。本堂の周りにもいくつもの大きな絵馬が取り囲み、何十頭、何百頭とも思える馬が描かれており、当時の迫力が感じられます。

今回は初午大祭ということで、お堂の中に入ることができました。ご本尊は弘法大師作の十一面観世音菩薩。数々の彫刻も天井画も数百年以上の歴史を感じさせてくれる見事なものです。堂内にもたくさんの絵馬が掲げられています。寛政七年に小淵沢村を含む集まりから奉納されたものも見ることが出来ました。

境内は決して大きなものではありませんが、馬頭観音や石灯籠も歴史のあるものばかりで見応えがあります。

これまで矢の堂しか知りませんでしたが、同じ様な歴史を持ち、千年を超え、今も地域の人々によって大切に引き継がれているふたつのお堂を知ることで、戦勝祈願から農耕馬の安全祈願まで、時代とともに移り行きながらも、改めてこの地域の馬との深い結び付きを感じることとなりました。馬といえば現在は乗馬が主流となりますが、ぜひ沢山の皆様に紹介したい鎧堂観音さまです。

境内、桜の木に囲まれていましたので、次回は桜の季節に訪れてみたいと思います。

鎧堂観音までは、Google mapを頼りに進み、曲がり角には小さな看板が出ているので分かりやすいです。
ぜひ皆さんも訪れてみて下さい。

*小淵沢の矢の堂は信玄公の時代に現在の観音平(八ヶ岳編笠山登山口)に移祀され、武田家滅亡の後、村民によって再度小淵沢に移祀されています。2020年には茅葺きが葺き替えられ、修復も行われました。かつて矢の堂でも午の日の矢の堂祭りが行われていましたが、現在は大般若経転読会のみが毎年5月3日に行われています。